2013年07月16日

ばんみかせー!八重瀬町青年エイサー祭り

ばんみかせー!八重瀬町青年エイサー祭り
●迫力満点にエイサーのトップを飾った,ぐしちゃん青年会

ばんみかせーっ!! 八重瀬ニーセーター

・・・ということで,去る2008年10月12日に開催された第2回八重瀬町青年エイサー祭りの様子を紹介したいと思います。

今年は八重瀬町から5団体,町外から1団体の青年会がエイサーが出場しました。まとまったものとしては今年最後の青年会エイサーのイベントだったと思います。
 この八重瀬町エイサー祭りは今年で2回目。生まれたばかりのまだまだ若いイベントですが,八重瀬町には様々なスタイルのエイサーが存在しており,今後の発展が大いに期待できるエイサー祭りです。
 このエイサー祭では,青年会エイサーだけでなく,獅子舞や棒術など地元の様々な芸能もありました。15時からの第一部でエイサー以外の芸能を仮設舞台上で披露し,夜の帳が落ちる夕刻18時から第2部,グランドいっぱいに場所を移して,青年会エイサーが繰り広げられました。
 自分が,会場の東風平運動公園に到着したのは17時半。夕焼け空のグランドは第1部の出し物がすべて終わり,エイサーが始まるまで30分ほどのトークタイムに入っていました。実行委員長そして八重瀬町長の挨拶を聞きながら,観覧席に腰をおろしてボリュームたっぷりの弁当をほおばります。エイサーの開始に備えてしっかり腹ごしらえをした次第です。

そして,18時。エイサー祭り(第2部)開始。一番手は,冒頭に登場の,具志頭(ぐしちゃん)青年会です。

【ぐしちゃん青年会】
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●ぐしちゃん青年会の手踊り(左)とチョンダラー(中)と大太鼓(右)

20年前,沖縄市でも大胆でパワフルだと定評がある諸見里青年会からエイサー指導を受けた,ぐしちゃん青年会。冒頭写真のように強烈なエイサーで,祭りのトップを大いに盛り上げました。
 そして,ぐしちゃん青年会の見どころのひとつは女子手踊りにあります。一見したところ,沖縄市諸見里青年会と同じ出立ちの女子手踊りですが,オリジナル曲の「えんどうの花」では,胡蝶蘭(?)の花枝を両手に踊ります。自分,今回それを写真に収めるのを狙っていたのですが,あいにく「えんどうの花」の時には女子手踊りはずっと離れてところに位置していて撮ることができませんでしたので,お見せできません(;_;)
 個人的な趣向を述べれば諸見里エイサーが好みである自分,ぐしちゃんエイサーは大変見ごたえがありました。
 
【東風平青年会】
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●東風平青年会。前座の舞(左)の後,エイサーシンカが入場(中),四つ竹を操る女子手踊り(右)

次に登場したのが,東風平青年会。写真を見てわかるように与勝方面の流れを汲むエイサーです。
 2人のチョンダラー(サンラー)がによる前座の舞に続いて,エイサーシンカが円陣になって登場します。前出のぐしちゃん青年会の動感溢れるエイサーとは対照的な「静」のエイサー。洗練されたパーランクーとしなやかな手さばき,一糸途切れぬ指笛であたりを包み込みます。
 見事な演舞で魅せる東風平青年会ですが,実は今年,エイサーが発足したばかり。宜野湾市の我如古青年会(うるま市与那城エイサーの流れを汲む)から指導を受けました。もちろん,旧盆もエイサー祭りも今年が初めてなのですが,黙っていればそうだとわからないくらい統率がとれていて,静かながらも内面に秘めたパワーを感じる見ごたえ十分のエイサーでした。
 八重瀬町の青年会でも,異彩を放つエイサー,今後が大変楽しみです^^

【中城村久場青年会】
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●中城村からのゲストは久場青年会。女子手踊り(左),大太鼓(中),締太鼓(右)

そして,「静」のエイサーの後は再びパワフルな締太鼓エイサー。今回,沖縄中部から招待された中城村久場青年会です。この団体を初めてみたのは,2年前の「第2回あがりなーざとエイサーまつり」。
 沖縄市東青年会仕込みのエイサーは,力がこもっていて緩急が大変明瞭でメリハリのあるものでした。ここも発足5年の若いエイサーですが,イベントへ参加も大変多く,この9月には赤花まつりを主催するなど,活躍著しい青年会です。
 さて,当日の順番では久場青年会に続いて,地元の新城青年会の演舞だったのですが,先に安里青年会をご紹介したいと思います。ここは,前出のぐしちゃん,久場と同じく,大太鼓,締太鼓,手踊りのエイサー。園田エイサーの流れを汲む糸満市米須青年会から28年前にエイサーを習ったというだけあって,スピーディーで躍動感あふれるエイサーは見る者の目を楽しませてくれます。同じ締太鼓エイサーですが,ダイナミックさで迫るぐしちゃんエイサーや緩急の流れで魅了する久場エイサーとは,また異なった演舞様式でした。

【安里青年会】
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●安里青年会。右から順に,大太鼓,締太鼓,手踊りと続きます

【10月中秋のエイサーまつり】
ところで,この八重瀬町エイサー祭りはいわゆるエイサーシーズンを過ぎた後に開催されている祭り。夏の風物詩とされるエイサーは,旧盆を中心とした7月〜9月一杯のものだと沖縄県(特に中部)では考えられる傾向にあります。
 夏場を過ぎた時期なのに,大規模なエイサーまつりをするのはいかがなものかという声も実は聞きました。でも,自分はいいんじゃないかなと思っています。確かにエイサーは旧盆が一番大事だけれど,夏場を過ぎたからといって沖縄エイサーの伝統から逸脱することにもならないと考えています。
 エイサーというものは,本土から伝わった念仏踊りともともと琉球にあった集団舞踊(モーアシビーとか労作歌の類)が合体して出来てきたと一般的に考えられています。言い方を変えれば,エイサーのルーツは「念仏」と「モーアシビー」の二つであるということです。事実,各地の青年会エイサーで継承されているエイサー歌謡をざっと見渡せば,「仲順流り」等の念仏系の歌謡と「クダカ節」だとか「いちゅび小節」のような祝事恋愛系の歌謡といった,大きく2系統から成っています。
 エイサーのルーツのひとつには確かに盂蘭盆の念仏があり,夏場を中心とした季節物だとある程度はいえるでしょう。しかし反面,エイサーのもうひとつのルーツはモーアシビー(野遊び)やお祝い事です。これは季節物ではなく,別に夏場に限ったものではありませんので,旧盆や夏場以外にエイサーをやっても決しておかしくはないのではないかなというのが自分の見解です。

エイサーは盆の念仏踊りだという側面があるからには夏の旧盆中心の行事だけれど,お祝い踊りという側面もあるので夏場以外にも踊ってもいいはず。

そういうことで,10月開催の八重瀬町のエイサー祭りは,他にはない良い趣向だなと思うのですが,いかがでしょうか。


【新城青年会】
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●新城青年会。チョンダラーの前座の舞(左),大太鼓を先頭に整然と並ぶ新城青年会(中),独特の返打ちのパーランクー(左)

あと紹介すべき青年会は2団体となりました。新城青年会と富盛青年会です。
 両団体とも浜比嘉・屋慶名の系統を引くエイサーです。そう,太鼓男性が着用する被り物や陣羽織が昔の琉球の武将(按司)に似ていることから「サムライエイサー」とも一部で揶揄されるタイプのエイサー。八重瀬町に存在するエイサーの一角をなしています。
 まずは新城青年会。横一列にズラリと並んだチョンダラーの前座の舞の後,エイサーが始まります。一糸乱れぬ列をなして前面へと進み出てくるエイサーシンカ。大太鼓とパーランクーの衣装は屋慶名エイサーのそれにかなり似ていますが,演舞曲目がまるで違っていました。むしろ具志川のエイサーを思わせるような曲目と演舞様式。また,地面に着くかと思うほど,深々と腰を落とす大太鼓の動きはユニークなものでした。
 次に,富盛青年会。地元,東風平の団体で,颯爽としたパーランクーエイサーで祭りのトリを飾りました。ここのエイサーも大太鼓とパーランクーの衣装は屋慶名エイサーのそれにかなり似ています。ただ,新城とは異なって,こちらはサケカタミヤーの前座の舞も見られ,曲目もある程度,屋慶名エイサーと共通点がありました。オリジナルな特徴としては,女子手踊りが単独で踊る場面があること,バチが腕と直角になるような持ち方が屋慶名や浜比嘉のエイサーとははっきり異なっている点が見受けられました。

【富盛青年会】
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●富盛青年会。大太鼓のバチの構え方が独特だそうです。

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●富盛青年会の女子手踊りが単独で踊る場面(左)とサケカタミヤーの前座の舞(右)

服装はお互い似ているものの演舞様式がかなり異なった新城青年会と富盛青年会。見学していた当日は両方とも屋慶名エイサーの流れを汲んでいるのかなと思っていたのですが,新城青年会は直接には屋慶名とは関係ないとのこと。26年前に南城市(旧大里村)大城青年会をベースにしているとのことでした。ちなみに,大城青年会は浜比嘉島に古くから伝わる比嘉エイサーをベースにしています。エイサーの衣装だけを見れば,新城青年会のそれは,大城青年会よりもむしろ大元の比嘉エイサーに近いような気がしました。
 一方,富盛青年会のエイサーは,屋慶名エイサーの流れを汲む糸満市大里青年会から25年前にエイサーを習ったのが始まりだそうです。
 一見,お互い似ているようで,実は系統が異なる新城青年会と富盛青年会。起源をずっと最初までたどっていけばどちらも比嘉エイサーに行き着くのかもしれないけれど,やはり演舞内容が全く異なるという印象を持ちました。似て非なるこの2団体も八重瀬町のエイサーを特徴付ける大きな存在ですね。

【まつりが終わって】
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21時半,第2回八重瀬町エイサー祭りはすべてのエイサーが終わりました。

沖縄市由来の締太鼓エイサー, 与那城由来の僧侶スタイルのエイサー, 浜比嘉由来のサムライエイサー

カチャーシーでは,様々な衣装に身を包んだ青年たちが観客も交えて一斉にグランドになだれ込んでいました。
 歴史は浅いながらも八重瀬町には様々な流れを汲むエイサーが集まっていて,バラエティに富んでいます。それは,古くからエイサーがあったため同系統・類似のエイサーがひしめき合う沖縄市,北谷,うるま市といったエイサーの老舗的な地域には決して見られない特徴を形づくっています。エイサー祭りが始まってまだ2年目ですが,回数(年数)を重ねるにしたがって,この「多様なエイサーが集まる町」という特徴が八重瀬町の青年達にとっては大きな強みになっていくのではないでしょうか。

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 今ひとつ,八重瀬町のエイサー祭りについて,他地域にはない特徴として挙げられるのが,10月というエイサーシーズンをやや外れた時期に開催されているということ。他地域のエイサー祭りと時期的に重ならないということで,県内外のエイサーファンをはじめ集客力に期待できるという強みにもなっていると思います。
  最後にひとつ付け加えれば,先行地域からエイサーを導入しながらも,各青年会とも曲や踊りに独自の工夫を凝らして,オリジナリティのあるエイサーに仕上げています。
 多様性・独自性・開催時期にと,八重瀬町エイサー祭りは発展の可能性を大いに秘めていると思いました。その祭りを支える各青年会のパワーも目の当たりにして,今はまだエイサーの歴史が若いけれども,将来,八重瀬町はエイサーの一大中心地に成長するかもしれないと思った,沖縄の晩夏を飾ったエイサー祭りでした。

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閉会の挨拶も終わった22時前,暗く静かになった東風平陸上公園を後にしました。一時ほど前の太鼓や指笛の華やかな音がまだ耳元にはこだましていました。
(2008年10月30日執筆)


【資料1】今回出場の各青年会エイサーの由来系統図

●ぐしちゃん青年会←諸見里青年会(沖縄市)

●富盛青年会←大里青年会(糸満市)←喜屋武青年会(糸満市)←屋慶名青年会(うるま市)←比嘉エイサー(浜比嘉島)

●東風平青年会←我如古青年会(宜野湾市)←与那城青年会(うるま市)

●安里青年会←米須青年会(糸満市)←園田青年会(沖縄市)

●新城青年会←大城青年会(南城市)←比嘉エイサー(浜比嘉島)


【資料2】第2回八重瀬町エイサー祭りプログラム(2008/10/12)
15:00   開会宣言
15:05  安里子ども会
15:30  安里棒術保存会
15:55  志多伯獅子舞棒術保存会
16:20  友寄獅子舞棒術保存会
16:45  志多伯青年会
17:10  波名城獅子舞保存会
17:35  ストリートダンス

17:45  実行委員長あいさつ
17:55  来賓祝辞

18:05  ぐしちゃん青年会
18:40  東風平青年会
19:15  中城村久場青年会
19:50  新城青年会
20:25  安里青年会
21:00  富盛青年会
21:30  カチャーシー
21:35  閉会宣言

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Posted by まほろば旅日記編集部 at 23:44 │旧盆エイサー2008