2012年08月24日

集結!!関東のエイサー 〜中野チャンプルーフェスタ2010

集結!!関東のエイサー 〜中野チャンプルーフェスタ2010

予告通り、KIのエイサー旅日記、過去記事から、本土の青年会エイサーを紹介だぜ!

2年前の東京中野はチャンプルフェスタというエイサーまつり。

本土の青年エイサー詰め合わせを、とくと味わい尽くすがいい




キラキラ 『集結!!関東のエイサー 〜中野チャンプルーフェスタ2010』キラキラ 


集結!!関東のエイサー 〜中野チャンプルーフェスタ2010
●新井薬師境内で演舞する新風(あらかじ)エイサー。2002年に沖縄出身で都内在住の大学生たちが集まって始めたとされるエイサー団体。東京中野を代表するエイサー団体のひとつで,その本格的な内実と会員数の充実ぶりは沖縄本島の有名青年会と比べても遜色はない。後出の東京中野真南風エイサーとともに中野区エイサー連合会を担う主要団体。(2010年7月18日撮影)

去る7月17日と18日の土日,中野チャンプルーフェスタでエイサーを見てきました。
今年で6回目となるチャンプルーフェスタは,地元中野区の青年エイサー団体が中心となって運営しています。
 このまつりの特徴は,エイサーの道ジュネーが行われること。今年は,7月17日に地元のエイサーが4団体,そして7月18日には中野区外から招かれた関東各地のエイサーが10団体,JR中野駅北口から新井薬師にかけての商店街や路地などを道ジュネーしました。

その中からいくつかのエイサー団体を写真とともに紹介しながら,当日の様子などを紹介しましょう。まずはチャンプルーフェスタ1日目から。

【7/17(土)〜フェスタ1日目】
7月17日の14時過ぎ,梅雨明けの炎天下の中,JR中野駅の北口に出るとあたりに太鼓の音が響き渡っていました。
 駅前の商店街で自分が最初に出会った団体は,「東京中野真南風(まはい)エイサー」

集結!!関東のエイサー 〜中野チャンプルーフェスタ2010
●東京中野真南風エイサー(2010年7月18日撮影)

団体のフルネームが語るとおり地元中野区を拠点に活動する青年会エイサーです。
 雑踏のサンモール商店街。休日の昼下がり,大勢の人が行き交う中を,地謡に先導されて一列になってエイサー隊が所狭しと向かっていきます。数名の大太鼓の男を先頭に,締太鼓が十数名(全員男子)と数名の男手踊り,その後ろにピンクの絣衣装の女子手踊りがたぶん20人くらい続くなかなかの大所帯。それにチョンダラーが一人加わります。ここは質・量ともに冒頭写真の「新風エイサー」に匹敵します。
 東京中野真南風エイサーが「東京エイサーシンカ」から分派して誕生したのは2005年のこと。沖縄市出身の人を初代会長とし,沖縄市南桃原青年会のエイサーをベースにしつつも独自のアレンジを加えた東京中野区のエイサーとして発足した団体です。
 終了ポイントで唐船ドーイでしめた後,会長の号令。
 「整列!」
 「礼!」
 「ありがとうございましたー!!」
 
アーケードの商店街から炎天下の薬師通りへ,強烈な日射しに屈することなく躍動感あふれるエイサーで終始,貫き通しました。

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●東京中野真南風エイサーの締太鼓衆(左)と女子手踊り(中),そして歌舞伎メイクの真南風のチョンダラーさん(右)。青年会エイサーとしての全てのレパートリーが揃った本格的な陣容でした。小学生の踊り手は東京中野南風童エイサー(真南風エイサーの子供会)のメンバー

さて,話をチャンプルーフェスタに戻しましょう。
炎天下,15時をまわるころに真南風に続いて現れた団体は「エイサータコライス」

はじめ,その名称を耳にしたとき,バリバリの創作太鼓集団が登場するのか!?と思いきや,とんでもない間違いでした。
 ゆったりとした地謡とサンシン伴奏に合わせて現れたのは,下の写真のごとく渋いエイサー。

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●中野新道エイサー「タコライス」の太鼓(左)と手踊り(右)。この日のメーカタは大太鼓が2名,締太鼓が3名,そして女子手踊りが5名でした(2010年7月17日撮影)

太鼓の男性陣が羽織る裾の長いクンジ衣装は,古い石川エンサーや恩納村の青年会が着用していた衣装を彷彿とさせます。そして,女子は藍色の絣衣装とアカバナーをあしらった特徴的な髪型。どことなく琉球舞踊の雑踊り(ぞうおどり)っぽいイメージでした。
 服装だけではなくて,エイサーの踊りもまた独特でした。舞踊のように摺り足がかった所作で歩を進める締太鼓に,「めでたい,めでたい・・・」の歌詞に合わせ,こねり手の動きが顕著な手踊り。

「いや,ウチは東京オリジナルのエイサーなんですよ」

それとなく質問してみると,特定のベースというものは存在せず,沖縄出身の人が中心になって様々な要素をアレンジして編み出した独自のエイサーだとのことでした。
 通称「エイサータコライス」なのですが,正式には「新道(しんみち)エイサー‘タコライス’」らしい。踊りの終盤あたり,「花笠節」で太鼓が相当スローテンポで力強い動きで魅せたのはまた本当に印象的でした(※註1)。このエイサーは関東の団体ながら,エイサーが琉球舞踊の一部であることを再認識させてくれます。
 中野区の路地街「昭和新道」に息づく新道エイサータコライスはその場所柄とあいまって,レトロな雰囲気を醸し出しているエイサーでした。


【7/18(日)〜フェスタ2日目】
中野チャンプルーフェスタの2日目には,中野区外から来たエイサー団体が昨日と同じコースを道ジュネーし,暑さをものともせず中野に集まった沖縄ファンやエイサーフラーたちを沸かせました。
 当日,自分が道ジュネーを目にしたのは沖縄市園田青年会の指導を受けたという和光青年会,桜美林大学の学生から成る桜風(おうかじ)エイサー,沖縄市胡屋青年会の東京支部兄弟団体ともいうべき町田琉,リトルオキナワ横浜鶴見から来た沖鶴エイサーなどなど。
 
そのいくつかを写真でご紹介しましょう。

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桜風エイサー琉球風車(おうかじえいさーりゅうきゅうかじまやー)。2008年発足で,桜美林大学のエイサーサークルを母体とする団体。沖縄国際大学のエイサー団体「琉球風車(りゅうきゅうかじまやー)」と親睦し,その踊りの型を取り入れて活動。従って,エイサーの見た目も「琉球風車」とほぼ同様だった。写真はフェーシを張り上げる大太鼓(左)と女子手踊りが履く島ぞうり(右)

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具志川倶楽部。本土では数少ないパーランクーエイサーの団体。うるま市具志川区青年会のパーランクーエイサーの指導を受け,それを研究・実践するのを目的としているらしい。見たところメンバーは壮年以上の人々。当日は太鼓のみで手踊りはいなかった。なお,年齢を感じさせないキビキビと切れ味のあるパーランクーさばきでした。

集結!!関東のエイサー 〜中野チャンプルーフェスタ2010
横浜市沖鶴エイサー会。路地を進む太鼓。2003年,横浜市鶴見でエイサーのみならず沖縄の青年会と同様の諸活動を目指して発足。沖縄市山里青年会のエイサーを手本にしているらしい。最近,空手をベースにした男子の手踊りに注力している雰囲気が伺える。

ところで,中野区の界隈を練り歩くエイサー道ジュネーを2日間にわたって見学して,本場沖縄の旧盆エイサーの道ジュネーと比べてどうであったのか?

結論だけをさきに言えば,中野区の道ジュネーは沖縄県のものとは別物でした

人が行き交う普通の道を歩くエイサー,曲がりくねった路地を進むエイサーは,ぱっと見,沖縄の青年会が行う旧盆エイサーの道ジュネーを東京中野の地でも再現されているかに見えるのですが,やはり似て非なるものでした。
 
すぐに思い当たる相違点を挙げれば,
1)時間帯の違い。沖縄の旧盆エイサーは多くの場合,夜に行われるが,中野チャンプルーフェスタのものは昼間の時間帯のもの。
2)目的の違い。沖縄の旧盆エイサーは祖先供養が目的であり,亡くなった人の家の前では特に念入りにエイサーを踊って供養するなど宗教的な意味合いが確固として存在するが,中野チャンプルーフェスタのものはあくまで沖縄文化をアピールするイベントの道ジュネー。
3)交通規制がきくかどうか。沖縄県であれば青年会が一定エリアの通行止めをしてエイサーを通すのが当然だが,本土の場合はそれは無理。従って,中野チャンプルーフェスタでは人ごみの中を,複数の実行委員に密着ガードされながらエイサーが行進するという沖縄ではあり得ない道ジュネー風景が見られた。

・・・といったところでしょうか。誤解のないように申し添えますと,自分はチャンプルーフェスタの道ジュネーは本場沖縄の道ジュネーと異なるからダメだとかニセモノだとか主張しているのではありません。むしろ,違っていてそれでいいと考えます。沖縄県(琉球)と東京都(江戸)では歩んできた歴史的背景も違えば,地理的特性もまったく違うし,当然ながら民俗的・文化的なバックボーンはお互いに全く異なっているといっても過言ではないくらいです。文化背景が異なる両地域でエイサーのあり方,というかエイサーの受け入れられ方が互いに異なっていて当然だし,異なっているほうが健全な姿だと思うのです。 

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横浜市沖鶴エイサー会。旗頭(左)と女子手踊り(右)。ノスタルジックな路地(すーじ小)のエイサーは一見,本場沖縄の道ジュネーそのものと錯覚してしまいそうになるけれど・・・

エイサーは沖縄県からいただいた伝統芸能だけど,本土では本土の風土に合った形で地域に根付いていけばいいんじゃないでしょうか。

7月18日の夕方,まだ暑い新井薬師の境内において,真南風と新風のエイサーが地元中野の和太鼓とともに競演し,奉納されるのを見届けながらそう思いました。

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●7月18日の日暮れ時,東京中野真南風エイサーが渾身の演舞で,2日間にわたった関東におけるエイサーの祭典の締めを飾りました。

そして,あたりが暗がり始める18時,中野駅北口広場。真南風エイサー,新風エイサー,そして中野打越太鼓(氷川神社祭礼の和太鼓)が再び集結。
 総勢100人近いエイサーと,和太鼓がコラボしました。締めの「唐船どーい」のあとはカチャーシーならぬ東京音頭で,観客も交えての総踊り。

サンシンの音に御輿の鳴り物もコラボします。

これがヤマトに根をおろした沖縄のエイサー,これぞ東京中野のエイサー

今年も『エイサー夏の祭典』が無事滞りなく完了しました。

祖先霊が地上に戻るお盆に先立って,古来,神々が来臨すると信じられてきた夏越の候,天神地祇八百萬神 (あまつかみくにつかみ. やおよろづのかみ) を武蔵中野の地に迎える前触れの太鼓は今年もあまた鳴り響きました。

2010年7月30日

(本文註)
※1:ちょうど沖縄市東青年会のアヤグ節での踊りのような感じでした。


2010年8月19日:KIさん執筆

2012年8月23日:島袋大介がリメイク



と、ところで、沖縄県は今週末は、2連台風直撃だぜ!

今週末といやぁ、場所によっちゃあ、青年エイサー祭のよていがあったりしたよな、読谷村(8/25)とか金武町(8/26)とかよー

そのまま台風なら、きっと中止か延期の公算が高いってもんだ。

もはや、俺のお経ではどうにもなんねえ

せめて、旧盆にあらたな台風が直撃しねえよーに、法体姿になってお経を唱えるぜ!!


集結!!関東のエイサー 〜中野チャンプルーフェスタ2010色不異空  空不異色  色即是空  空即是色

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Posted by まほろば旅日記編集部 at 03:05 │エイサーなど2010
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