2013年07月16日

新宿エイサーまつりが終わって思うこと(2)〜伝統と創作

数年間,エイサーを追っかけ続けていると,エイサーに関するいろいろな話題が自然と耳に入ってきます。そういう話題のひとつが・・・

伝統と創作の違いについて

これ,実は結構微妙な問題なんだと思います。伝統エイサーと創作の違いに関しては以前からいろいろと言われていて,特に最近,沖縄県内を中心に「エイサーに関して伝統と創作の区別をすべし!」という声がとみに強まってきているのかなぁ〜,と感じていたりします。
 沖縄ファンクラブのレポーターをしていたときからエイサーの話題はしばしば扱っていたけれど,この話題に触れることはありませんでした。といいますか,難しい問題をいろいろと孕んでいる事柄なので触れたくはなかった,自分はこの話題について何か言うにはあまりに知識不足なので避け続けてきたというのが正直なところです。
 そして,今。年ばかりとって,知識不足と生兵法は相変わらずだけど,自分なりに「エイサーの伝統と創作」について考えてみようと思います。
 簡単に言えば,伝統エイサーとは本場沖縄で青年会などが旧盆に踊るもので,創作とはその本場のエイサーを真似たモダンでアトラクション的なダンスということになります。新宿エイサーまつりには,本場沖縄から来た青年会,創作の団体,そしてどちらともいえない団体,色んなタイプの団体が毎年出場し新宿駅東口エリア一帯で演舞を繰り広げます。数年来,新宿エイサーまつりを見ました。その新宿エイサーまつり,どの年にも共通する特徴のひとつが,同じ土俵での本場と創作の対比でしょう。

新宿エイサーまつりが終わって思うこと(2)〜伝統と創作
●創作太鼓チーム「琉球國祭り太鼓」(2003年第1回新宿エイサーまつりにて)

いわゆる「創作」団体の演舞は,激しい動き,明るい(楽しい)音楽,派手な見た目の3条件がどの団体にも共通して必ず揃っていると思います。音響いっぱい,流行のポップミュージックのDVDに合わせた太鼓パフォーマンスで会場を沸かせます。中でも有名なのが「琉球國祭り太鼓」でしょう。新宿エイサーまつりでも初回から2009年まで欠かさず出場した創作団体の常連。大小の太鼓を小道具として洗練されたポージング演技,観光沖縄をイメージしたアトラクション,そして一糸乱れぬマスゲームで毎年,多くの観客を魅了します。
 
新宿エイサーまつりが終わって思うこと(2)〜伝統と創作
●宜野湾市宜野湾区青年会のエイサー(2003年第1回新宿エイサーまつりにて)

そして,毎年必ず招聘される沖縄の青年会。こちらはガラリ変わって,音楽はサンシン弾きながしの地謡。大太鼓,小太鼓,そして手踊りのメーカタ(舞方)とそれをフォローする白粉メイクのチョンダラー(京太郎)。DVDの大音響には負けるけれど,凛とした地声の伝統歌謡とともに,舞われるエイサー。見た目も動きも派手さやスマートさはないけれど,太鼓の一打一打に力(心?)がこもっていて,ドン,ドン・・・と鳴り響くたびに内面的なパワフルさで真に迫ってきます。手踊りもパァ〜ッと明るい感じではないけれど,古典的でしなやかな振りの女子手踊りや空手の型の男子手踊りはダンスパフォーマンスとは異なる趣があります。その素朴な踊りは決して,明るくて楽しいイメージではないけれど,自分はどこかしら重みが伝わってくるような印象を歴代出場のどの青年会からも受けました。
 
・・・以上,自分のつたない見立てで申し訳ありません。でも,前記事「新宿エイサーが終わって(1)」で述べた「沖縄から来た青年会のエイサーは関東の団体のエイサーとは一味も二味も違う雰囲気を醸し出していた」というのをもっと詳しく正直に説明したのが上記の見立てです。新宿エイサーでは複数の会場を出場団体がローテーションしていて,ひとつの会場で関東の団体と沖縄の団体が定められた順番に出てくるのですが,不思議なことに沖縄の青年会のエイサーになると今までとはガラリと空気感が変わるんです。これは自分の先入見にすぎないのかもしれませんが,ホント,毎年そう感じた次第。

何かが違う

そう,伝統エイサー(エイサー)と創作太鼓(エイサー風ダンス)は同じ太鼓舞踊でありながらビジュアル的にも空気感も異なるわけですが,それを支えるバックボーンもお互い異なります。このあたりの話はある程度エイサーのことを知っている人ならば心得ていることではあります。伝統と創作の議論では必ず言及される,地域社会との関連性や本来の先祖供養という目的如何の事柄です。
 改めて自分自身で書籍やエイサーに関するサイト等で調べてみました。そして,伝統と創作それぞれを取り巻く事情や由来を集約・分類してみると,だいたい以下のような感じになるでしょうか。

【伝統エイサー(エイサー)】
・旧盆に行う先祖供養の目的が第一。
・琉球土着の芸能に念仏が結びついてできたらしい。
・どちらかといえば季節もの(年中行事の一環)
・地域に伝わる伝統芸能を継承し概して素朴で民俗的な意義も大きい。
・現在は地域の青年会が主な担い手。
・地域との強固な結びつき。
反面,流行に左右されがちで,踊りの型や曲など随時変化する。


【創作太鼓(エイサー的な創作ダンス)】
・エイサーを基に,昭和の末以降に新たに編み出された創作ダンス。
・舞台公演・イベント興行を目的とし,先祖供養や地域とは基本的に無関係の存在。
・季節に全く左右されない。
・常に流行を追い続ける存在で派手なパフォーマンスとアトラクションは必須条件。
・有志によって結成されたサークル等が主な担い手。イベント系企業が団員を募集・雇用してチームを作る例もある。
・踊りや衣装,パフォーマンスをチーム間で競う。
反面,実は琉球文化を重視し,パフォーマンスの中に沖縄的な趣向をふんだんに取り入れることが多い。


こうやって,それぞれ箇条書きにしてみただけでもエイサーと創作太鼓はだいぶ違いますね。もはや,沖縄で地域を担うエイサーと,見世物志向の創作太鼓は異なるジャンルの芸能として区別されるべきなのは疑う余地もないですね。そして,一見,「エイサー=伝統を守る」,「創作太鼓=流行を追う」と結論できてしまいそうです。事実,伝統エイサーと創作の区別をそのように説明している書籍も見かけました。でも・・・

 残念ながら伝統遵守と流行追求はエイサーと創作太鼓を区別する指標にはなり得ないんですびっくり!

もし,「青年会エイサー=伝統」としてしまうと,年々新しいパフォーマンスを積極的に取り入れる屋慶名エイサーはどうなるのでしょうか?THE BOOMの「島唄」や新安里屋ユンタでエイサーをする多くの青年会はどうなるでしょうか?
 また,逆に,創作太鼓の雄「琉球國祭り太鼓」は伝統の獅子舞や旗頭演舞や組踊りを積極的にアトラクションに取り入れていますがいかが?
 ・・・というように矛盾点がちらほらと出てしまうのです。それぞれの箇条書きの最後にも挙げたけれど,実は地域の青年会でも流行を取り入れることは少なくないし,逆に創作太鼓は「沖縄」をアピールするために琉球古来の要素を取り入れたりもするのです。

じゃあ,いったい・・・

実は,エイサーと創作太鼓を区別するのに,今のところ一番良い指標は「地域社会との結びつき」になるのではと思います。
 青年会(地域)のエイサーは地域の支えがあってはじめて成り立つものです。地域(シマ,集落)の人間関係の中ではぐくまれた10〜20代の青年男女が,地域のおかげで生活できていることを感謝し,地域を創り維持してきた先人を供養する目的で,集落内を道ジュネー(シママーイ)するのがエイサー本来の姿。そして,エイサーをすることは同時に地域に古くから伝わる芸能も多分に継承することにもなる。その過程で,青年会員のエイサーに対する愛着やプライドも生まれる。(具体例→「思い出の青年会?〜沖縄市諸見里青年会」
 一方,創作太鼓は地域社会とは基本的に無関係に結成し活動するのが普通であり,むしろ,イベントを事業とする企業や財団と結びつくでしょう。2年ほど前に聞いた話ですが,とある大手イベント会社がマッスルミュージカル経験者などを中心にEisa Performer/Taiko Dancerを募って,「スーパーエイサーチーム」なるものを新設し,東京ビックサイトかどこかのモーターショーで,イベントのイメージソングにあわせて「スーパーエイサー」を演じさせ,その太鼓パフォーマンスは並み居るセレブたちに大好評を博し,イベントの成功に大きく貢献したそうです。
 
あ〜,今回は簡潔にまとめるつもりだったのに気がついたらまたまた長々とかいてしまった・・・ガ−ン

ここらでまとめに入りますと,

エイサーは地域(シマ,集落)に根付く民俗行事で地域貢献を目標にし,しばしば宗教性が強いもの
そして,
創作太鼓はイベントの収益や集客のために結成された組織体で,しばしば営利的性質が強いもの

今やエイサーと創作太鼓は別物。目的も立場も互いに異なり,それぞれ全くといっていいほど異なるスタンスで社会参画するものなのだろうと自分は考えるに至りました。
 今回,いろいろと見聞し,調べました。新宿エイサーまつりで毎年,沖縄からの青年会エイサーを見るたびに,素朴ながらも際立って内面から染み出るパワーみたいなのを感じる理由がなんとなくわかったような気がします。

新宿エイサーまつりが終わって思うこと(2)〜伝統と創作新宿エイサーまつりが終わって思うこと(2)〜伝統と創作

※注!2002年7月27日に沖縄県主催の全国エイサー道ジュネーとの共催イベントが,第1回新宿エイサーまつりであることが判明しました。見解が別れており現在も当時の詳細な事情を沖縄側と新宿側の各方面から調査中ですが,2002年を第1回とカウントすれば,写真説明中の表記回数は第1回ではなく第2回となります。すみません(2010/8/25記)

2010年8月5日

(参考文献等)
・エイサー360度(全島エイサー実行委員会)/Wikipedia「エイサー」/その他サイト上に公開されている研究論文等
(追伸)
次回は,本場のエイサーでもないし創作太鼓というにはあまりにも違いすぎる本土のエイサー団体についてです。なお,創作太鼓のことをわかりやすく「創作エイサー」とよく表記しますが(これだと創作はエイサーの一種だと誤解を招く),自分は創作のエイサー風ダンスはエイサーではないという考えに至っておりますので本文中ではあえて「創作太鼓」というわかりにくい表記に統一しています。
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Posted by まほろば旅日記編集部 at 23:43 │雑談・ひとりごと
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